大口径チューブ
愛用のバイク、Cannodale の特長と言えば、大口径のダウンチューブ、砂時計型シートステイなどがありましたが、現行モデルではシートステーは真すっぐに変更されています。それでも、大口径のダウンチューブの伝統は続いています。その効果はどれぐらいのものか、簡単に計算してみました。
この写真でもダウンチューブが普通のバイクに比べて太いのがわかるでしょうか?
こんな風にダウンチューブの径を太くすると、力学的にはどんな効果があるのかと考えてみました。
チューブに作用する外力は、圧縮、曲げ、せん断、ねじりが考えられますが、例えば圧縮と曲げについて考えてみます。
なお、私の副業(という本業ですが)は土砂水理学(皆さんの普通に聞き慣れた言葉でいうと、流体力学がこれに一番近いかもしれません)で、構造力学の知識は大学で習っただけなので、静的な話しかしていません。動的な特性の話をすれば全然ちがうことになるかもしれませんが、あしからずです。
ではまず、圧縮方向は、圧縮応力は次のような式で書けます。
ものすごく簡単でFが力、Aが部材の断面積です。
部材の面積が同じなら口径が大きくても、小さくても圧縮方向には関係ありません。もっとも、部材厚を同じにしたまま、口径を大きくすれば断面積が大きくなるので、圧縮応力は小さくなりますが、断面積が大きいと言うことは、その分重くなるということですね。
次に曲げに対してはどうなるのでしょうか。曲げ応力は次の式で計算できます。
σが曲げ応力、Mが曲げモーメント(これが外力)、Zが断面係数です。曲げモーメントが同じなら断面係数が大きい方が応力は小さいというとです。
簡単のために、チューブが円形で次のような形をしているとします。
この場合の断面係数は次の式でかけます
適当な数値ですが、部材厚が1mmで直径60mmのチューブがあったとすると、
D=60mm、d=58mmを代入すると
Z=2687.8mm3です
部材の断面積は次のとおりなので、
D=60mm、d=58mmを代入すると
A=185mm2
です。
重さを変えないように、部材を薄くして口径だけ大きくするとします。仮に直径を70mmにすると、同じ面積にするためには、部材厚を1mmから0.85mmまで薄くすればよいことになります(計算すれば、すぐわかりす)。
この場合の断面係数は、D=70mm、d=68.3mmから
Z=3152.3mm3
です。
口径が60mmと70mmで断面積が同じ時の断面係数の比率は
3152.3 / 2687.8 = 1.17
となり、17%も曲げ剛性があがることがわかります。
数値が適当なので、いまいち説得力がありませんが、こんな感じでCannondale の薄肉大口径のダウンチューブはやはり効果があるのかなと再確認した次第です :D
Recent Comments